この記事は、以下のようなお悩みをお持ちの方に向けて書かれています。
- 「医療の業務効率化のためにDXソリューションを導入したい」
- 「新人研修を安全かつより効果的に行う方法を探している」
- 「VRの導入にあたりどんな課題があるか知っておきたい」
■ はじめに
病院での治療やリハビリが、VRゴーグル一つで変わる時代がやってきました。
VR医療と聞くと、SFのような未来を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、その中心にあるのは、決して派手な技術だけではありません。
単なる効率化やデジタル化ではなく、“人に寄り添う医療”を実現するための道具として、未来の医療現場に静かに革命をもたらしています。
むしろVR医療は、人にやさしく寄り添い、“人間らしさ”を取り戻すツールとして注目されています。
本記事では、医療業界におけるVRの具体的な活用事例をWONQがご紹介していきます。
導入にはメリットだけでなく課題もあります。
VR導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
■ 医療業界でVRを導入した活用事例とメリット
医療業界がVRを導入する理由は主に以下のようなものがあります。
1. 手術トレーニング・医療教育
VR技術は、医療教育や手術トレーニングの分野で革新的な変化をもたらしています。リアルな臨床環境を仮想空間で再現することで、医学生や医療従事者は安全かつ効率的に技術を習得できるようになりました。
・リアルな手術体験の再現:若手医師が高リスクな手術をVRでシミュレーションが可能
・解剖学の3D理解:身体の構造を立体的に学習。
・遠隔教育:地方医療機関でも専門的トレーニングが可能。
◇ メリット:失敗リスクの軽減、安全・反復可能
2. 術前シミュレーション・手術支援
VRのもっとも注目される活用法の一つが、術前のシミュレーションや治療説明です。
患者が自分の体の3Dデータを使って、どこに問題があり、どう治療されるのかを視覚的に確認することができます。
それは、専門用語では伝わらなかった「納得」や「安心感」を生む、新しいコミュニケーションのかたちとなり、医師と患者の“距離”を縮めるテクノロジーでもあります。
・CT/MRIデータから患者の3Dモデルを構築
・手術計画の事前立案(例:腫瘍切除のナビゲーション)
・ARと連携し、手術中に“透視”のような支援が可能
◇ メリット:手術精度向上、時間短縮
◇ 活用分野:脳外科・心臓外科・整形外科など
3. リハビリテーション
従来のリハビリは、単調で苦痛を伴う作業でした。
しかし、VRを使えば、ゲーム感覚で楽しく動けるプログラムが実現できます。
特に高齢者や子どもにとっては、「楽しい」「自分でできる」という体験が、自立へのモチベーションにもつながります。
人にとって、“動きたくなる気持ち”は、薬以上に強い効果を持つのかもしれません。
・仮想空間での運動訓練(歩行・上肢・バランスなど)
・ゲーム性を持たせた反復練習で高齢者のモチベ維持
・遠隔でも可能な自主トレサポート
◇ メリット:楽しさ×治療効果で継続率UP
◇ 対象:脳卒中後、パーキンソン病、認知症予防 など
4. 疼痛緩和・鎮静補助
慢性的な痛みや幻肢痛の治療において、VR技術は新たなリハビリ手法として注目されています。
たとえば幻肢痛のある患者には、VR内で“失った手足が動いているように見える映像”を提示し、脳が「四肢が存在し、正常に動いている」と認識することで痛みを軽減するアプローチ(ミラーボックス療法のVR版)が用いられています。また、慢性腰痛や関節痛の患者には、ゲーム感覚で身体を動かすVRエクササイズが提供され、楽しく継続的にリハビリを行うことで、痛みに対する恐怖感や回避行動を減少させ、運動機能の改善とQOL向上につながっています。
・VRによる意識の分散で痛みや不安を軽減
・火傷治療・出産・小児の注射時などに効果
・麻酔・薬の使用を最小限にできる可能性も
◇ メリット:非薬物的な安心感
◇ 実績:SnowWorld(火傷患者向け)など。患者は雪だるまやペンギンが登場する氷の世界をVRで体験し、雪玉を投げるなどのインタラクションを通じて注意を痛みから逸らします。
5.メンタルヘルス・精神科領域
メンタルヘルス・精神科領域でも、VRを活用した治療が注目されています。社交不安障害では、VRで会話や発表の練習を行い、不安の軽減を図ります。PTSDの治療にも用いられ、安全な環境でトラウマ体験に向き合うことが可能です。VRは個別に合わせた新しい治療手法として期待されています。
・曝露療法(恐怖症・PTSD):恐怖対象を安全な環境で体験
・不安障害・うつ病・社交不安の治療支援
・マインドフルネスVR・瞑想体験の導入も進む
◇ メリット:現実では困難な環境でも安全に治療可能
◇ 注意点:セラピストの介入が重要
◇活用例:セルフカウンセリング(引用「公益社団法人日本心理学会」)
6.患者・家族への説明支援
VRは、患者や家族に病状や手術内容を視覚的に説明するツールとして活用されています。
手術部位や病変を3Dで立体的に示すことで理解を深め、不安の軽減や納得感の向上、家族の意思決定支援にもつながります。
・手術内容や疾患の理解を、3D映像でわかりやすく提示
・家族に向けたIC(インフォームド・コンセント)強化
◇ メリット:患者の不安軽減・医療事故防止
7.終末期医療・緩和ケア
終末期医療や緩和ケアの現場では、VRによる最後の旅行が感動を呼んでいます。
動けなくなった患者が、VRゴーグルを通じて、行きたかった場所を“体験”する。富士山の頂上、パリの街並み、故郷の海辺――その風景は、心に深くしみわたります。
これは、単なる娯楽ではありません。
“人生の締めくくりに、自分らしく過ごせる時間”をつくる医療の形なのです。
・「行きたかった場所」へのVR旅行で心のケア
・家族との“仮想面会”など、精神的なつながりを保つ
◇ メリット:QOL向上、穏やかな最期の支援
◇ 活用例:ホスピス・在宅医療でのVR活用
■ 医療VR導入の主な課題とその解決策
1. 高コストへの対応策
課題:
VR機器・ソフトウェアの導入費、コンテンツ制作費が高い。
解決策:
- 国・自治体の補助金・助成金の活用
→ 医療DX、遠隔医療、働き方改革関連の補助金制度を活用。 - クラウド型VRサービスの導入
→ ハードを購入せずに利用できる「サブスクリプション型」のVRを選ぶ。 - 大学・研究機関・企業との共同開発
→ コストを分担しながら、ニーズに即したVRコンテンツを共同で開発。
2. 技術的ハードルへの対応策
課題:
医療従事者がVR機器に不慣れ。操作に時間がかかる。
解決策:
-
シンプルなUI(ユーザーインターフェース)の機器を選定
→ 医療従事者が直感的に操作できる設計がされた製品を選ぶ。 -
導入時のトレーニングを必須化
→ 導入企業による初期研修、マニュアルや動画を整備。 -
VR担当者を施設内に配置
→ IT・リハビリ部門などにVR操作・管理の専任担当者を設ける。
3. 臨床効果のエビデンス不足への対応策
課題:
VRの有効性に科学的根拠が不十分な場合がある。
解決策:
-
エビデンスのあるVR製品を選定する
→ 論文・臨床試験の結果が公開されている製品を優先。 -
小規模な試行導入(パイロット運用)から始める
→ 効果を自施設で検証し、段階的に導入範囲を広げる。 -
第三者評価機関との連携
→ 効果測定やフィードバックを外部に委託し、客観性を確保。
4. 利用環境・衛生面への対応策
課題:
VR機器の設置スペースや衛生管理が不十分。
解決策:
-
持ち運び可能なスタンドアロン型VRを採用
→ PC接続不要の一体型機器(例:Meta Quest)で省スペース対応。 -
消毒しやすい機器や専用カバーの活用
→ アルコール対応のシリコンカバーや使い捨てフェイスカバーを使用。 -
使用後の消毒マニュアルを整備・徹底
5. 患者のVR酔いや適応への対応策
課題:
一部の患者にとってVR体験が負担になることがある。
解決策:
-
使用前に酔いやすさ・精神状態を確認
→ 既往歴に応じたスクリーニングを実施。 -
短時間の使用から徐々に慣らす
→ 初回は5分程度の導入から始め、様子を見ながら使用時間を延長。 -
VR酔い対策が施されたコンテンツを選定
→ カメラ移動が少ない、視点が固定されているものを選ぶ。
6. データ・プライバシー管理への対応策
課題:
患者データの取り扱いやセキュリティ対策が不十分だとリスクに。
解決策:
-
医療情報保護に準拠したシステムを選ぶ(例:HIPAA、ISO 27001)
-
個人情報を含まない形式での記録・匿名化
-
クラウドサービスには二要素認証やアクセス制限を設定
■ 最後に
本記事では医療業界におけるVR活用事例や課題についてご紹介いたしました。VRの中にも、すでに製品かされているものを利用する形から、企業のニーズに合わせて完全オーダーメイドで制作を依頼する形があります。
WONQは、法人向けの完全オーダーメイドのAR・VRソリューションを企画から開発、運用までワンストップで提供する企業です。
まだ検討段階でアイデアが固まっていないという企業の方でもまずはお気軽にこちらのお問い合わせページよりご相談ください。
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